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Room EQ Wizardで音響補正

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以前のブログに2016年2月14日に投稿した記事ですが、気づいたらいろいろ加筆しちゃったので再投稿します。REWのバージョンが古いですが、最新版(V5.19)でも同じように使えます。

背景: 部屋の音質がよくない

スピーカーで音楽を聴く人間は部屋の定常波や反射による音質の低下に悩まされます。やる気のある人は、吸音材を貼ったり家を建て直したりして、ルームアコースティックを整えます。しかし、一般的に自宅をレコーディングスタジオ風にすることは、ハードルがとても高いです。

そこで、もっと手軽に音楽を楽しむ方法として、リスニングポイントの周波数特性を計測して、それをもとに再生音に手を加えて、リスニングポイントでの周波数特性をフラットに近づけて、音楽がバランスよく聞こえるようにする(定常波や反射の影響が消えるわけではありません)ことが、オーディオオタクの間で流行っています。これを音響補正(Digital room correctionなどとも)と呼びます。

音響補正を実現するシステムとして、PA用ですがBEHRINGER DEQ2496が人気です。計測用マイクとあわせて約5万円と(オーディオオタク的に)安価で、手っ取り早く使えます。

もっと自由にやりたい場合はRoom EQ Wizard(REW)という無料で利用できるソフトウェアがあります。本記事ではREWの使い方を紹介します。

準備

必要なものを準備しましょう。

計測用マイク

ちゃんとしたものはめっちゃ高いです。

本記事では約1万円のDayton Audio EMM-6を使います。EMM-6は1台ごとのキャリブレーションデータ(校正用プロファイル)が付属するのでおすすめです。安いものだからか、キャリブレーションデータを見ればわかりますが、結構アレな特性しています。余談ですが、同価格帯のBEHRINGER ECM8000はキャリブレーションデータが付属しませんね…。

EMM-6はコンデンサマイクなので対応するオーディオインタフェースも必要です。Focusrite Scarlett Soloなど。もしくは、USBマイクのUMM-6を使うという手もあります。イヤホン端子で使えるiMM-6も気になります。

Room EQ Wizard

http://www.roomeqwizard.com/
Windows、macOS、Linuxに対応しています。本記事ではWindows版のREW V5.14を使います。

(オプショナル)騒音計

音圧レベルのキャリブレーションで使います。iPhoneならSonic Tools SVMなどがあります。

REWを使う

1. マイクのキャリブレーションデータを適用する。

キャリブレーションデータがある場合は適用します。
Preferences > Preferences (Ctrl+Shift+E) > Mic/Meter

2. 音圧レベル(SPL)のキャリブレーションを行う

リスニングポイントにマイクを設置し、キャリブレーションを開始します。
Tools > SPL Meter > Calibrate > Use REW speaker cal signal



騒音計を見て、実際の音量をREWに教えます。

3. 計測する

システムの周波数特性を測定します。
File > Measure > Start Measuring

結果が表示されます。画像は1チャネルのみですが、左チャネルと右チャネルでそれぞれ計測します。

4. 音響補正用のEQを生成する

4.1. スムージング

このままではよくわからないので、スムージング処理をして見やすくします。
Graph > Apply 1/48 smoothing (Ctrl+Shift+9)

4.2. EQ生成

続いて、音響補正のためのEQを生成します。EQボタンをクリックします。

右側メニューを次のように設定します。

Equaliser(一番上のメニュー、画像では隠れています)
いろんなイコライザ用のプリセットがあります。今回は後述するソフトウェアイコライザを使うのでGeneric(汎用)にします。
Target Settings
CrossoverやSlopeは、スピーカーを作るときとかサブウーファーがある人とかに役立つメニューです。Speaker Type = None, LF Rise Slope = 0.0, HF Fall Slope = 0.0
Target Levelはイイ感じの値にセットしてください(極端に盛り上がっているところを除いた平均とか)。もしくはSet Target Levelで低めの値に自動的に設定してくれます。いずれにしても左右で同じ値にします。EQの生成アルゴリズムは、Targetを基準に、山をつぶして谷を放置する傾向がある気がします。
Filter Tasks
Match Range50 to 5000Hzくらいにします。50Hz以下は多くのスピーカーで出ないです。5000Hz以上は反射を気にする必要がありません。
Flatness Targetはどれくらいフラットにしたいのかを入力します。3dBから4dBが良いと思います。画像のように6dBだとほとんどEQしなかったり、逆に1dBにするとEQを大量にかけることになります(正確に補正できるわけじゃないのであまり意味がない)。
Match Response to Targetを押すとフラットにするためのEQを生成します。
Modal Analysis
部屋のサイズを入れます。Find Resonances算出した共鳴周波数を下に表示します。(これはただの参考情報?)

設定が完了したら、Filter Tasks > Match Response to Targetをクリックします。

EQの自動生成を行い、結果の予測も出してくれます(Predicted)。上部のEQ Filtersボタンを押すと生成されたEQが表示されます。パラメータを変更したり、不要なものを削ったりしてイイ感じに編集します。

音響詳しくないのであまり的確なことは書けないのですが、次のような方針に基づいて考えると良いかもです。

  • Q > 6.0 の狭いEQは無視(聴覚上わからない)
  • 200Hz から 800Hzのあたりは聞きながらやる、ボーカルが中央にくるようにする(左右の区別がつく周波数なので)

音響補正を適用する

1. Equalizer APO

Windowsのみですが、Equalizer APOという完成度の高いソフトウェアイコライザがあるので利用します。

REWで、File > Export > Export filter settings as text で現在選択している計測のEQをテキストで出力できます。これを左右の2チャネルでそれぞれ出力します。

Equalizer APOで設定ファイルをIncludeします。図のように左右チャネルで個別に反映できます。

2. 非推奨: 個別のアプリケーション

File > Export > Filters Impulse Response as WAVでインパルス応答をWAVファイルに保存します。よく使うビットレートとサンプリングレートのものは作成しておきましょう。

音楽プレーヤー: foobar2000

foobar2000はマルチプラットフォームの音楽プレーヤーです。Inpulse Response Convolverというインパルス応答の畳み込みができる便利なプラグインがあります。ダウンロードしてpath/to/foobar2000/componentsに入れます。

  1. foobar2000でFile > Preference (Ctrl+P) > PlayBack > DSP Managerから、ConvolverActive DSPsに移動します。
  2. Convolverを選択した状態でConfigure selectedをクリックします。
  3. 先ほど生成したインパルス応答のWAVファイルを選択します。
  4. Level adjustは音割れしない程度にします。Auto level adjustにチェックが入っていればいいかも?

動画プレーヤー: MPC-HC

Media Player Classic - Homecinema (MPC-HC)はWindows用のOSSなメディアプレーヤーです。ConvolverというOSSな畳み込みプラグインがMPC-HCで使えます。設定方法はドキュメントにもあります。

MPC-HCで表示 > オプション > 外部フィルタ > フィルタを追加... > ConvolverFilter

  • ConvolverFilterにチェックをつけます
  • {“優先する”, “使用しない”, “メリット値を設定”}で、“優先する"を選びます

ConvolverFilterをダブルクリックすると設定画面が出現します。

  • Get config or IRのところに先ほど生成したインパルス応答のWAVファイルを選択します(再生データとビットレートおよびサンプリングレートが同じじゃないとだめです。DVDなら48kHz/24bitが多い?)
  • Attenuationは横にあるCalculate…を押すと自動で算出できます。

ConvolverFilterを使うと、音声処理に時間がかかるので、映像と音声がズレます。オプションからズレを直す設定を行います。私の場合は-2.7秒で合いました。(遅すぎじゃね?って気がしますが…)

最後に

うまくいけばヘッドフォンで聞いたときのような落ち着いた音になります。狭い部屋なら低音域がかなり削られるはずです。オーディオオタクはデジタル処理に抵抗感がある人が多いですが、この手法はモニタースピーカー(Genelec GLM)やDAWプラグイン(IK Multimedia ARC SystemSonarworks Reference)、高級DAC(RME ADI-2アキュフェーズ DG-68)にも使われているので、かなり実用的だと考えられます。

少なくとも銀ケーブルやレゾナンスチップのような…おや、誰かが来たようだ。